所員・研究員の活動

三村昌泰MIMS所長が,広島大学附属高等学校SSH特別講義で現象数理学の紹介をしました

2009年11月30日,三村昌泰MIMS所長が広島大学附属高等学校スーパーサイエンスハイスクール特別講義『ヒマワリ模様に数学を探る』において現象数理学の紹介をしました。

※ 文部科学省が指定する「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」とは、未来を担う科学技術系人材を育てることをねらいとして、理数系教育の充実を図る取組です。

 

ヒマワリ模様に潜む数学を探る

— 数学を自然科学に持ち込んだのは、数学者でなく、自然そのものである —
イマニエル・カント

 今私達の住んでいる21世紀社会では、地球環境変動の予測、自然災害の予知、疫病の病原・伝染経路の解明等いくつかの難問題を抱えています。昨年、我が国の未来を拓く科学技術の振興を進める科学技術振興機構から、これらの解決が緊急課題であり、そのためには、既存の1つの分野だけでは不十分であり、各分野の融合そして新しい分野の振興が必要であり、特に、そのためにはそれらと数学分野との連携が重要であるとの報告書が出されました。
 これに答えるために、「現象数理学」と言う新しい学問分野を提唱されました。君達にとって耳慣れない言葉ですが、簡単に言えば、「現象を視て、理解する」、正確に言えば、現象を数理的に記述し(モデリングと言います)、そのモデルを数学やコンピューターを使って解析し、現象を理解することを行う数理科学、あるいは(広義の意味で)数学の一分野であると言って良いかもしれません。実際、対象とする現象に対して、モデルがすでに存在しているときには、数学的な動機だけでその解析を行うことが出来ます。しかしながら、モデルが常にあるわけではありません。特に複雑な現象には、多くの場合モデルがないので、数学を直接使うことができないのです。「現象を視る」ための最初の作業であるモデリングが要求されるのです。これは数学という枠の中では出来るものではありません。このとき現象数理学の出番があるのです。これが成功すると、第2の作業として数学により近い所の「モデルの解析」が始まるのです。こうして現象がモデルと解析から結果が得られると、その理解を通じて新しい法則が発見できたり、未知の予測が出来たりするわけです。
 このように、数学だけの知識だけではなく、対象とする現象に応じて、物理、化学、医学等自然科学分野、社会、経済、環境等の社会科学分野の人達、それと共に、解析に応じて純粋数学、計算機科学、シミュレーション科学等の人達と共同で作業を行わなければならないのが現象数理学なのです。この意味で現象数理学は21世紀に生まれた新しい学問分野であると言えるのです。
 今回の講義では現象数理学の一端を紹介するために、植物に現れる神秘さの理解に焦点を絞り、ひまわりの種の配置構造が持つ不思議さを現象数理学的手法によって解明することを目的としたいと思っています。今回の講演を機会に、君達に現象数理学という言葉を覚えて頂き、興味をもって頂ければ、嬉しい限りです。

平成21年11月

明治大学理工学部・教授/先端数理科学インスティテュート・所長
三村昌泰


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