明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)では、2011年度から毎年、「高校生による現象数理学研究発表会」を開催してきました。2019年度の第9回は台風19号のため直前に中止を余儀なくされ、2020年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により開催できませんでしたが、2018年度の第8回まで全国各地から多くの高校にご参加いただき、活気ある研究発表の場を提供することができました。これらの発表会に参加してくださった生徒や教諭の皆様、また、このプログラムの開催に協力してくださった関係者の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。
さて、MIMSでは、2021年度より新しいプログラムとして「高校生のための現象数理学入門講座と研究発表会」を立ち上げました。これは、数理的視点を自然や社会の理解に活用する面白さを一流の講師が語る入門講座と、高校生による研究発表会の二部構成になっています。二部構成とすることで、多角的な視点から現象数理学の魅力を伝えるとともに、より多くの皆様に興味をもっていただけると考えております。また、こうした活動を通して、我が国における現象数理学の裾野がさらに広がるよう願っております。発表会に参加しない方も視聴は自由ですので、多くの方々のご参加・ご視聴を歓迎いたします。
MIMS所長 西森 拓
開催日 : 2023年10月7日(土)、8日(日)※参加無料
開催方法 : Zoom社の Webinar 機能を使用したオンラインで開催
プログラム :
次の2部構成になります。
視聴のみの参加も可能です。 高校生や高校教諭に限らず、どなたでも視聴できますので、ぜひご参加ください。視聴申し込み受付は2023年8月1日(火)から開催当日まで。(申し込みフォームは後日、当ページ内で公開します。)
スケジュール
10月7日(土) 13:50~16:00
入門講座
講師:矢崎成俊(理工学部)、廣瀬善大(総合数理学部)10月8日(日) 9:55~12:00
入門講座
講師:矢崎成俊(理工学部)、廣瀬善大(総合数理学部)13:00~16:40 高校生による発表会(表彰式、講評を含む)
◆ スケジュールは変更になる場合があります。
◆ 講師 : 矢崎成俊 (明治大学理工学部数学科 教授) ◆ 講師 : 廣瀬善大 (明治大学総合数理学部・准教授) |
※ 数理的視点を自然や社会の理解に活用する面白さを一流の講師が語る入門講座です。
※ それぞれ約50分の講義が2回ずつ行われます。
(講義題目は変更される可能性があります)
【矢崎成俊】 講座タイトル 第1回 「自然界や人工物のらせんや渦の数学」
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撮影・河野裕昭 |
講座概要
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オウムガイの殻の断面(Wikipediaより) |
巻き貝、アンモナイト、羊の角、蝸牛、台風、渦巻き銀河、鳴門の渦潮、ひまわり、松ぼっくりなど、らせん(螺旋)や渦といった、渦巻きの形状をしたものは自然界で多く観察されます。一方、アルキメデスのコークスクリュー、道路の緩和曲線(クロソイド曲線)、蚊取り線香、ヒゲゼンマイなど、渦巻きの形状を利用した人工物も少なくありません。 第1回の講座では、自然界や人工物に散見されるさまざまならせんや渦の数学的表現を紹介します。 また、今年は関東大震災100年の年です。第2回の講座では、甚大な被害を出した陸軍被服本廠(現在の墨田区)において発生した火災旋風という渦構造の仕組みについて考えます。 第1回、第2回とも可能な限り実験を交えながら話を進める予定です。
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蚊取り線香 |
入門講座
第1回「自然界や人工物のらせんや渦の数学」
2023年10月7日(土)
身の回りを見ると、螺旋(らせん)や渦といった、「くるくる」しているものが多いことに気が付きます。つむじ風や台風は渦を巻きながら移動しています。理容室の入り口にある赤青白のサインポールは電動で回転しています。動かない渦もあります。蚊取り線香は平面内の螺旋、バネは立体的な弦巻状の螺旋です。このように、自然物でも人工物でもいろいろな「くるくる」がありますが、それぞれ意味があります。数学(数式)を用いて、様々な「くるくる」の特徴付けをして、渦を巻く理由や意味を考えてみましょう。
入門講座
第2回「関東大震災における火災旋風の脅威」
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火災旋風の絵(Wikipediaより) |
2023年10月8日(日)
関東大震災は、いまから100年前の1923年9月1日,ほぼ正午に神奈川、東京を中心として発生した関東大地震による災害です。10万人以上の死者、行方不明者を出しました。木造家屋が多かった上に昼食の準備も重なって、焼死が主たる死因でした。特に、陸軍本所被服廠跡地(現在の墨田区横網町公園)に避難した38,000人は15分足らずのうちに火災旋風により犠牲になったといわれています。火災旋風とは何か、被服廠跡地で何が起こっていたのか、渦の観点から概観します。
【廣瀬善大】 講座タイトル 第1回 「統計科学からデータを見る」
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講座概要
近年、統計科学をはじめとするデータサイエンスや、関連する人工知能・機械学習の躍進には目覚ましいものがあります。研究の進展も大きく、社会への展開も急速に進んでいます。最近話題のChatGPTのような華々しい応用が目を惹く一方で、統計科学には面白い基礎的な問題があり、数理的にも意外な研究が知られています。
本講義では、日常生活のどこにでもあるような簡単な例を通して、まずデータを整理することの意義を確認します。その次に統計科学の素朴な問題を考え、一見単純な問題であっても簡単に結論づけられないような例を紹介します。さらに、統計科学との関連がすぐには分かりにくい幾何学の観点から、統計科学の問題がどう見えるのかを紹介します。
入門講座
第1回「統計科学からデータを見る」
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表の例 |
2023年10月7日(土)
統計科学ではまずデータを得て、それを整理するところから分析が始まります。講義の第1回では、データを表として整理することと表から結論を得ることを考えます。これらはとても簡単な作業に思えますが、実は見落とされやすいポイントを含んでいます。さらに厄介なことに、表から明らかであるような結論も実際には間違っていることがあります。データ分析に潜む落とし穴を紹介し、どのような仕組みで間違った結論に導かれてしまうのかを解説します。
入門講座
第2回「幾何学から統計科学を見る」
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2023年10月8日(日)
統計科学と関連の深い数理といえば確率がまず思い出されますが、講義の第2回では幾何学と統計科学との関係を扱います。統計科学の問題や方法はある種の幾何学を使って説明できることが知られています。まず、第1回の講義で扱った統計科学の話題を整理し、幾何学の観点からどのように見えるのかを紹介します。さらに、統計科学の文脈で出てくる要求が幾何学ではどのような性質として反映されるのかについて、例を通して説明します。
高校生による現象数理学に関する研究を募集します。応募内容を審査し、優れた研究を複数表彰します。応募方法、 研究成果の提出方法の概要については、下記をご覧ください。
◆ 募集対象の研究 :
数理的視点を用いて「自然」や「社会」や「日常生活」に現れるさまざまな現象の理解を深めることをめざす研究。
◆ 募集期間 :
◆ 応募方法 :
原則として所属高校の担当教員を通じてご応募ください。
◆ 提出する研究成果の形式 :
数式、図、写真などの組み込みは自由です。
◆ 優れた研究の表彰 :
◆ 審査基準 :
審査の際は以下のポイントを重視しつつ、総合的に評価します。
1.研究テーマと成果について
2. 研究成果の書き方について
明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)
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TEL : 03-5343-8067 (8月10日~16日を除く 月~金の平日 9:30~16:00)
E-mail:mims.cmma.meiji [at] gmail.com
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